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このほど独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)が、2015年5月1日現在での日本の大学や日本語学校に在籍する外国人留学生数を発表した。
総数は20万8379人で、前年同期比2万4224人増となっている。
出身国・地域別では、中国(9万4111人)、ベトナム(3万8882人)をはじめ圧倒的多数をアジア地域が占めているが、今後はインドネシア、とりわけ"新生"ミャンマーからの留学生が増えると期待される。
一方日本からの海外への留学生数は、文部科学省の発表によると、直近の資料である2013年の集計で5万5350人。
国・地域別ではアメリカ(1万9334人)、中国(1万7226人)、台湾(5798人)、イギリス(3071人)という順序になっている。
海外の留学生にとって人気がある国・地域は、アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ドイツ、フランスなど欧米の先進国に集中している。
これは英語圏であったり、旧宗主国であったりということで、その理由には頷ける。
しかし非英語圏のドイツでも国内の学生の1割が留学生で、またドイツ人の海外留学は学生全体の40パーセントを超えている。
なぜか?
その理由としてドイツ独自の制度が考えられる。
ドイツでは、在学中に1年間海外留学をしても進級が可能である。
あるいはいったん就職してから留学してもその間、企業による一定の給料の支払いが保証されているということがある。
国をあげて海外からの優秀な学生たちを歓迎し、またドイツの企業が多少身を削ってでも社員を留学させているのは、それが結果的には輸出産業立国ドイツにとって重要な国際人脈のインフラ構築に寄与しているからに違いない。
こういったドイツの制度やインセンティブには日本が学ぶべきものが多々ある。
アメリカでもフルブライトスカラシップをはじめ様々な奨学金制度が実施されている。
日本人をはじめその恩恵に浴した学生は、母国に帰ってからも財界、政界、学術分野など多方面でリーダーとして活躍している。
彼らのなかには当然親米派が多い。
その結果、アメリカの安全保障にも好影響を与え、軍事的ハード面のコストに比べればコストパフォーマンスの高い国益として還流されているといってもいいであろう。
日本は自他ともに認める経済大国、科学大国、観光大国である。
その大国の果たすべき使命として日本政府は、これまでからも留学生の増員や国際的な人材育成における制度改革を進めて来た。
かつて福田(康夫)政権時代には、グローバル戦略の一環として2008年〜2020年の間で留学生を30万人にまで増やすという「知の開放」とでもいうべき計画が策定された。
そして安倍(晋三)政権は第二次発足以降、アジアの秩序を守り、平和を促進し相互的経済発展に貢献するべく積極的平和主義をスローガンに掲げたが、一方で大学の改革、留学制度の見直しなどを積極的に行っており、リーディングユニバーシティのモデル校として37大学が選出され、グローバルな人材の育成に多額の補助金も出されている。
もちろん課題も多い。
非漢字圏からの留学生にとって、日本語検定の1級レベルを取得するのは極めて困難である。
今後英語で受講でき学位のとれる大学を増やす必要があるだろう。
あるいは日本語研修におけるビザを現行の2年から3年に延長できれば、非漢字圏からの留学生でも2級を目指すことが可能となる。
翻って鑑みるに日本は100有余年前、アジアで他に先駆けて近代産業国家となった。
それ故にアジア諸国・地域の若きエリートたちは日本にあこがれ、日本の技術や文化はもとより、混迷するアジアにおける国家の在り方そのものをも学ばんとして悲壮な決意をもって海を渡った。
そして帰国後は母国のリーダーとして育って行った。
かつて日本も古くは遣隋使、遣唐使、下っては欧米視察団を送り出し、かの国の多くを学んだ。
このような歴史を知れば、今日ある日本の技術力や経済発展なども日本一国だけで完結したものではないことが分かる。
今後も知の共有、財の共有を世界のなかで強力に推し進め、共栄、共存することがグローバリズムの真の文明的意義であると思われる。
その意味でグローバリズムは今や不可逆な文明的マニフェストデスティニーといってもいいだろう。
もちろんすべての国・地域が有する国境線、あるいは民族のアイデンティティといった「境界」は厳として存在する。
しかし人、モノ、金、情報は地球上を24時間ボーダレスに駆け回っているのも事実である。
かつてのシルクロードや大航海時代の交易から現在の自由貿易圏(FTA)、環太平洋連携協定(TPP)、アジアインフラ投資銀行(AIIB)などの動向にもそれが見て取れる。
このような文脈の中で留学生の問題を考える必要があるであろう。
日本を留学先に選んだ海外の学生に、快適な留学生活を送り、技術や知識とともに日本人のもつ細やかな感性や精神文化をも吸収・体得してもらうことは、それが結果的には「親日」というおおいなる果実を日本にもたらすことにもなる。
そして日本という異国文化で培った多様な包括力、極めて難しい日本語をマスターした屈強な忍耐力と専門知識を武器にすれば、彼らは世界中を舞台に大いに羽ばたき続け、いずれ日本にも好影響をもたらすであろう。
今後とも官民あげて世界の、そして特にアジア近隣諸国・地域からの若き知性を積極的に受け入れる戦略を練っていく必要があると思われる。
私どもは微力ではあっても、そのお手伝いの一端を担い、彼らアジアの留学生を渾身の思いでサポートしていきたいと願うものである。

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